退去した部屋のフローリングに傷が。張替え費用は借主に請求できる?
退去された部屋を確認すると、フローリングの一部に大きな傷が。この場合の原状回復費用は、借主に請求できるのでしょうか?
フローリングの補修に関する国土交通省の 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン の考え方についてご紹介します。
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインではどのように記載されている?
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインによると、フローリングについては、
「経過年数を考慮せず、部分補修費用について毀損等を発生させた賃借人の負担とするのが妥当であると考えられる。」
とされています。
なお、「フローリング全体にわたっての毀損によりフローリング全体を張り替えた場合は、経過年数を考慮するのが適当である。」
とされています。
フローリングの傷で貸主の負担となるケースはどのような場合?
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン によると、 通常の使い方をしてできた損耗については、貸主の負担とされています。
そのため、
・家具を設置したことでできたへこみや設置跡
・日が当たったことによりフローリングが変色した場合
等については、通常の使い方をしてできた損耗とされ、貸主の負担となるケースが多いとされています。
フローリングの傷で借主の負担となるケースはどのような場合?
賃借人の故意・過失・善管周囲義務違反によるもの、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損について は借主の負担とされています。
そのため、
・引越作業で生じたひっかき傷
・雨の吹き込みを放置したことによりできた色落ち
・落書き等の故意による毀損
等については、 常の使用を超えるような使用による損耗・毀損として、善管注意義務違反として、借主の負担となるケースが多いとされています。
フローリングの傷がある一部分のみを補修した場合は?
フローリングの傷がある一部分のみを補修した場合は、つぎはぎの状態になるため、フローリング全体の価値が高まったと評価できるものではないとして、「部分補修にかかった費用の全額を借主が負担することが妥当」と考えられます。
仮に、フローリングの傷を一部分のみ補修する工事で50,000円かかった場合は、借主の負担額も50,000円であると考えられます。
フローリング全体を張替えした場合は?
フローリングの傷がある一部分のみの補修だと、つぎはぎの状態となってしまうため、フローリング全体を張替えすることにした場合はどうでしょうか。
この場合は、前述の通り、 「経過年数を考慮するのが適当である」と考えられます。
これは、木造のアパートの場合耐用年数22年、鉄筋コンクリートのマンションの場合耐用年数47年等、建物の構造により適用される耐用年数が変わってきます。
当該建物の耐用年数で残存価値1円となるような直線を想定し、負担割合で算定するとされています。
仮に、木造のアパート(耐用年数22年)で入居10年で退去、かかった原状回復費用100,000円かかった場合、借主に請求できる金額は、
100,000×(12年/22年)=54,545円が請求できる金額であると考えられます。