ペット禁止の部屋でペット飼育 退去時の原状回復費用は借主に請求できる?

ペット飼育禁止のお部屋で、無断でペット飼育され、退去後のお部屋の状況がひどかったという経験のある大家さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、 国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン の記載内容をもとに、ペット飼育禁止の部屋でペット飼育された場合の原状回復費用の請求についてご紹介します。

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインの基本的な考え方は?

国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインによると、

通常の住まい方や使い方をしていても発生すると考えられる損耗や経年劣化 ⇒ 貸主負担

借主の故意・過失・善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような損耗や毀損 ⇒ 借主負担

とされています。

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインではどのように記載されている?

では、ペット飼育の場合の原状回復について国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインではどのように記載されているのでしょうか。

賃貸人・賃借人の修繕分担表では、
「飼育ペットによる柱等のキズ・臭い(ペットによる柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合)」は「賃借人の負担となるもの」とされています。

借主には、善良なる管理者の注意義務である「善管注意義務」があります。

そのため、通常使用の範囲を超えた使用方法が原因で起こる損傷や汚損については借主負担とされています。ペット禁止のお部屋でのペット飼育によるキズや臭いについては、通常の使用による汚損を超えるものと判断される場合が多いとされています。

原状回復にかかる判例の動向はどうなっている?

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインに記載されている、原状回復にかかる判例の動向において、ペット飼育に関するものはどのような内容となっているのでしょうか。

そちらで紹介されている、東京簡易裁判所判決平 14.9.27では、ペット飼育に起因するクリーニング費用を賃借人負担とする特約が有効とされた事例が紹介されています。

判例によると、「ペットを飼育した場合には、臭いの付着や毛の残存、衛生の問題等があるので、その消毒の費用について賃借人負担とすることは合理的であり、有効な特約と解される」とされています。

ペットがつけたクロスの傷や臭いがある場合でもクロスの経過年数の考慮が必要

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインによると、クロスは6年で残存価値1円となるような負担割合を算定するとされています。

そのため、6年間入居されたか借主がペットを無断で飼育していてクロス貼り替えが必要な場合でも、6年以上経過していると価値が1円となるため借主に請求はできないとされています。

なお、柱や建具にペットがつけた傷があった場合には、経過年数は考慮されないので、補修費用を借主に請求することができるとされています。