タバコのヤニによるクロス汚れの貼り替え費用は借主に請求できる?
退去された部屋を確認すると、タバコのヤニでかなり汚れた状態だったという経験のある大家さんも多いのではないでしょうか。
今回は、国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインの記載内容をもとに、タバコのヤニによるクロス汚れの貼り替え費用の費用負担についてご紹介します。
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインではどのように記載されている?
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインによると、タバコ等のヤニや臭いがある場合について、「喫煙等により当該居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合のみ、当該居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とすることが妥当と考えられる」とされています。
借主には、善良なる管理者の注意義務である「善管注意義務」があります。
そのため、通常使用の範囲を超えた使用方法が原因で起こる損傷や汚損については借主負担とされています。タバコのヤニによるクロスの汚れについては、通常の使用による汚損を超えるものと判断される場合が多いとされています。
クロスは6年で残存価値1円となる。経過年数等の考慮が必要
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインによると、クロスは6年で残存価値1円となるような負担割合を算定するとされています。
タバコのヤニによるクロス汚れについても、経過年数の考慮が必要とされています。
そのため、仮に10年入居された方が退去され、タバコのヤニによるクロス貼り替えが必要となった場合でも、6年以上経過していると価値が1円となるため借主に請求はできないとされています。
クロスの交換にかかる作業代は請求可能なケースも
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインによると、 交換にかかる作業代(作業員の人件費や作業料など)は請求することが可能なケースもあるようです。
国土交通省の 原状回復をめぐるトラブルとガイドラインでは、経過年数を超えた設備等を含む賃借物件であっても、工事費・人件費は借主負担となる可能性を示唆しています。
そのため、クロス本体の費用については請求できなくても、その工事費用については請求を行うことができる可能性があります。
賃貸借契約書に喫煙をした場合のクロス貼り替え費用は借主負担と特約で定めている場合は?
賃貸借契約については、貸主と借主の合意により、原則と異なる特約を定めることができるとされており、契約内容は原則として当事者間で自由に決めることができるとされています。
そこで、賃貸借契約で、タバコのヤニ汚れによるクロス交換を全て借主負担とすると特約で定めている場合はどうでしょうか?
この場合は、貸主が特約によりクロスの貼り替え費用を請求しても問題ないとされていますが、この特約は、以下を満たしていることが条件となっています。
・その特約に必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
・賃借人が特約により、通常の原状回復のルールを超えた修繕等の義務を負うことについて認識している
・賃借人が特約による義務負担の意思表示をしている
賃借人がこの特約について、特別な負担であることを認識して契約を締結していることが必要とされています。
個別の事情や状況などによりトラブルが想定される場合は、法律の専門家に相談することをおすすめします。