原状回復をめぐるトラブルとガイドラインとは?
賃貸マンション、アパートを所有する大家さんにとって身近な原状回復。
そこで今回は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」とはどのようなものか、原状回復をどのように定義しているか等についてご紹介します。
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインとは?
原状回復をめぐるトラブルは年間1万件以上に上ると言われています。
退去時における原状回復をめぐるトラブルの未然防止のため、賃貸住宅標準契約書の考え方や判例、取引の実務、原状回復の費用負担の在り方について定められたものです。
ガイドラインでは原状回復はどのように定義されている?
それでは、ガイドラインでは原状回復はどのように定義されているのでしょうか。
原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にしており、
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」
と定義されています。
ガイドラインで貸主の負担とされているものは?
それでは、原状回復をめぐるトラブルとガイドラインでは、どのようなものが貸主の負担と定められているのでしょうか。
「賃貸人・賃借人の修繕分担表」で、賃貸人の負担となるものとして、
・次の入居者を確保するために行う、畳の裏返し、表替え
・フローリングのワックスがけ
・家具の設置による床やカーペットのへこみ
・畳の変色
・フローリングの色落ち
・テレビや冷蔵庫等の後部壁面の電気ヤケ
・壁に貼ったポスターや絵画の跡
・日照などの自然現象によるクロスの変色
等が挙げられます。
通常損耗、経年劣化によるものは貸主負担とされています。
ガイドラインで借主の負担とされているものは?
「賃貸人・賃借人の修繕分担表」で、賃借人の負担となるものとして、
・カーペットに飲み物等をこぼした後の手入れ不足等によるシミ、カビ
・冷蔵庫下のサビを放置し、床に汚損等の損害を与えた場合のサビ跡
・引っ越し作業等で生じたキズ
・借主が日常の清掃を行ったための台所の油汚れ
・タバコのヤニ等の臭い
・落書き等の故意による毀損
・飼育ペットによる柱などのキズや臭い
等が挙げられます。
故意・過失・善管周囲義務違反によるもの、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損について は借主の負担とされています。
経過年数の考慮が必要な設備にはどのようなものがある?
原状回復を行う場合、経過年数の考慮が必要な設備と、考慮が必要ない設備があります。
経過年数を考慮するものとしては、以下のものが挙げられます。
・クロス
・クッションフロア
・カーペット
・畳床
・設備機器
経過年数の考慮が必要ない設備にはどのようなものがある?
経過年数を考慮しないものとしては、以下のものが挙げられます。
・フローリング
・襖紙
・障子紙
・畳表
なお、襖、障子等の建具部分と柱に関しても経過年数は考慮しないとされていますが、考慮する場合は当該建物の耐用年数で残存価値1円となるような直線を想定して負担割合を想定するとされています。
例外としての特約
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインでは、賃借人に特別の負担を課す特約の要件として以下を挙げています。
①特約の必要性があり、かつ暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
②賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
③賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
この要件を満たす場合に限り、原状回復に関しての特別の負担を借主に課す特約を設けることが出来るとされています。